近年、スマートフォンの普及もあり、誰でも気軽にネットショップが開業できるようになりました。法人や団体だけでなく、個人でも開業できるので、ぜひチャレンジしてみたいという方も多いでしょう。
今回は、個人でもできるネットショップの開業方法について詳しく解説します。ネットショップ開業のメリット・デメリット、注意点についても触れるので、ぜひ参考にしてください。
ネットショップと実店舗の違い
ネットショップを開業する前に、押さえておきたいポイントが実店舗との違いです。どのような違いがあるかを把握することで、ネットショップの運営を効率的にしやすくなります。大きな違いとして「営業時間」「接客方法」「決済方法」の3点について詳しく紐解いていきましょう。
営業時間
基本的に、実店舗では営業時間が設けられており、購買者は営業時間内に店舗を訪れる必要があります。そのため、タイミングが悪ければ、顧客を逃す可能性も否めません。
一方のネットショップは、24時間いつでもオープンしているため、購買者は時間を選ばずに買い物をすることができます。また、店舗に出向く必要もないため、天候や立地などを気にしなくて良い点も特徴です。
接客方法
実店舗の場合、お店のスタッフが常駐しているため、顧客と向き合って接客をすることができます。例えば、買い物の最中に、顧客が商品やサービスに関する疑問点を持ったとしても、速やかにサポートできる点は実店舗のメリットといえるでしょう。その一方で、あまりにも度を超えた接客をすると、煙たがられる可能性もあります。
ネットショップは、実店舗とは異なり、直接顔を見ながら接客することはできません。問い合わせは、基本的に電話やメール、問い合わせフォームなどを利用する必要があり、実店舗以上に丁寧で速やかな対応が求められます。
決済方法
実店舗では、決済方法のベースとして現金払いを導入している店舗がほとんどです。とはいえ、近年は、クレジットカードや電子マネーなど様々な支払い方法が増えており、実店舗でも現金以外の支払い方法が使えるようになりました。それでも、やはり現金払いは根強く、現金払いができないという店舗は少ないでしょう。
一方、ネットショップの多くは、クレジットカード決済やコンビニ決済、代金引換など、現金以外の支払い方法をメインとしている店舗が多くあります。支払い方法が多ければ多いほど、顧客としては使い勝手が良いため、ネットショップを開業するのであれば、支払い方法の充実を検討することが大切です。
ネットショップ開業のメリット
ネットショップを開業すると、実店舗では得られないメリットが多数あります。どのようなメリットがあるかを把握しておくと、ネットショップを開業する際の参考になるでしょう。
続いては、ネットショップ開業のメリットのうち、主な3つを詳しく解説します。
時間や場所を問わず営業できる
ネットショップの魅力は、なんといっても時間や場所を問わず営業できる点でしょう。実店舗の場合、営業時間はもちろん、立地が良くないと顧客獲得にはつながりません。
しかし、ネットショップは、インターネット環境とデバイスさえあればいつでも買い物ができる点が大きな魅力です。ネットショップの仕組みさえ整えば、海外から購入することもできます。また、ネットショップを運営する側も、立地を気にする必要がなく、自宅で作業することも可能です。
加えて、24時間365日営業ができる点も、ネットショップのメリットといえるでしょう。実店舗であれば、営業日以外に訪れた顧客を逃してしまう可能性がありますが、ネットショップではこうした心配がありません。
実店舗開業よりコストがかからない
実店舗に憧れがあるけれど、開業にかかるコストが大きいため、気軽にチャレンジできないという方も多いでしょう。実際、店舗を借りるための費用だけでなく、設備費や内装工事費などを踏まえると数百万円かかることも少なくありません。
一方、ネットショップの場合、シンプルなお店を開くのであれば、10〜20万円程度の費用で営業を始めることが可能です。実店舗と比べると、はるかに低コストで開業できるため、すぐにでもチャレンジしやすいでしょう。
短期間で開業できる
コストだけでなく、開業までの期間が短い点もネットショップで開業をする魅力です。実店舗の場合、開業を決めてから、店舗探しや契約、内装工事、設備工事など様々な工程を経なければ開業することができません。場合によっては、数ヶ月かかることも考えられます。
しかし、ネットショップであれば、最短で即日開業することも可能です。もちろん、軌道に乗せるまでには努力が必要であり、時間もかかりますが、開業だけであれば実店舗よりもはるかに早くできるため、コスト面と合わせて考えると気軽にチャレンジしやすいでしょう。
ネットショップ開業のデメリット
コスト面、時間面踏まえて考えても、気軽に開業しやすいネットショップですが、デメリットもゼロではありません。開業を検討している場合、デメリットも把握しておくことが大切です。
続いては、ネットショップ開業のデメリットを3つ解説します。
信頼を得るのが難しい
ネットショップは、実店舗とは異なり、直接顧客と対面して話すことがほとんどありません。その分、信頼を得るのが難しい点はデメリットといえるでしょう。
とはいえ、ネットショップを運営して利益を得るために信頼は欠かせません。そのため、顧客に不信感や不安を与えないように、真摯に向き合いながらスピーディーな対応をすることが大切です。また、顔が見えない分、小さな失敗や手抜きから信頼を失う可能性も否めません。ネットショップを運営するのであれば、顧客満足度に重点を置きながら、信頼を積み重ねることを忘れないようにしましょう。
梱包の手間がかかる
実店舗の場合、基本的には顧客がお店まで足を運び、購入した商品を自分で持ち帰ります。その際、商品によっては壊れないようにある程度の梱包をしますが、多くの商品はマイバッグや買い物袋等に入れます。
一方、ネットショップは、商品が売れた後の梱包作業に手間がかかる点がデメリットです。顧客が直接取りに来るわけではないため、配送先まで大切に届けなければなりません。配送時に破損すれば、信用問題に関わるので、梱包作業は細心の注意が必要です。
また、あまりにも過剰に梱包すれば、顧客側でゴミになってしまう点も気をつけたいところでしょう。壊れない工夫をしながら、ゴミの削減にも意識を向けながら梱包をすることが大切です。
集客が難しい
インターネット上には、膨大な数のネットショップがあります。個人でも気軽に開業できる分、ますますネットショップは増加していくでしょう。こうした中で、自分のネットショップを見つけてもらい、購入にまで至るのは大変困難です。
単純にネットショップを運営するだけでは、なかなか購入にはたどり着かないでしょう。ネットショップの集客を上げるためには、SNSやWeb広告などをうまく活用し、こまめなSEO対策をしなければなりません。効率的に対策を施すためには、それなりの知識やスキルが必要となるため、ネットショップ運営以外のリサーチや勉強も大切です。
ネットショップ開業のステップ
ネットショップを効率的に開業するためには、以下の6ステップを踏む必要があります。
- 商品コンセプトを決める
- ネットショップで販売可能か確認する
- 仕入れ先を決める
- 出店方法を決める
- ネットショップを構築する
- 個人事業主として開業する
続いては、それぞれのステップについて詳しく解説します。
商品・コンセプトを決める
ネットショップと一括りにしても、取り扱う商品やジャンルは様々です。闇雲にネットショップを開業しても、コンセプトがぶれてしまい、顧客に響く商品を販売できません。まず大切なのは、どんなコンセプトで何を取り扱うかを具体的に決めることです。
単純に好みだけで商品を選ぶのではなく、情勢やトレンドなどを踏まえながら、ニーズにあった商品を取り扱う必要があります。また、商品が決まったとしても、コンセプトが明確でなければ、顧客にわかりやすく伝えることができません。どのようなタイプの人に利用してもらいたいか、他店との違いは何かなどを具体的に検討していきましょう。
ネットショップで販売可能か確認する
全てのアイテムがネットショップで販売できるとは限りません。中には、法律で販売が制限されているものもあるので、ネットショップを開業する前に販売可能かどうかを確認しておきましょう。例えば、酒類や中古品などは、販売するために届け出が必要です。許可を得ずに販売をすれば、法律に反することになるので注意しましょう。
また、使用するシステムのルールもチェックする必要があります。例えば、アダルト関連の商品や偽ブランド品などは、システム上販売不可になっているケースがほとんどです。
仕入れ先を決める
商品やコンセプトが決まり、ネットショップで販売可能か確認できたら、仕入れ先を決めましょう。仕入れ先は複数あるので、取扱商品に見合った方法を選ぶ必要があります。
仕入れサイトを利用
ネットショップが広く浸透している昨今、問屋やメーカーを訪れなくても、パソコンを使って仕入れができる仕入れサイトを活用する方法があります。
仕入れサイトとは、問屋やメーカーの仲介をするサービスで、基本的には消費者が利用することはできません。会員登録をして、事業所として認められれば利用できるサービスが一般的です。
多くの仕入れサイトは、会員を法人に限定していますが、中には個人事業主も受け入れているサービスがあるので、厳選して利用しましょう。
また、仕入れサイトによって、取り扱う商品のラインナップが異なるので、コンセプトに合った商品が仕入れられるサービスを選ぶことも大切です。
OMEを利用
OMEとは、「Original Equipment Manufacturing」の略称で、依頼されたプランに合わせて製造のみを手がけるサービスです。
ノウハウを持ったメーカーが請け負っており、自動車や電化製品、化粧品、食品など様々な分野で導入されています。
オリジナル商品を販売したいけれど、個人でネットショップを立ち上げる場合、商品の企画や工場の手配などを行うのはハードルが高いでしょう。しかし、OMEを利用することで、初心者でも気軽にオリジナル商品を作ることができます。
作家やメーカー
気に入っている作家やメーカーの商品があり、それらを販売してみたいと考えている場合は、直接取引をするのもひとつの方法です。間に問屋や仕入れサイトを挟まないので、スムーズに交渉するための下準備をしてから、連絡を取ってみましょう。
例えば、ネットショップの店舗名や開業時期、コンセプト、取扱商品などを具体的に伝えると、イメージが伝えやすくなります。
また、ハンドメイドの商品をまとめて取り扱うWebサービスを見ながら、コンセプトにマッチする作家を見つけるのも良いでしょう。こうしたサービスであれば、直接作家とやり取りできるメッセージ機能があるので、気軽に相談できます。ただし、素性を明かさずに相談を持ちかけるのはマナー違反です。Webサービスを活用する際も、ネットショップの詳細を伝えてから、相談をするように心がけましょう。
海外仕入れ
海外製のアイテムを取り扱いたい場合は、海外仕入れをする必要があります。海外仕入れといえば、直接現地に出向いて交渉をするというイメージがありますが、海外のECサイトを活用すれば、日本にいながら仕入れることが可能です。
海外のECサイトは、英語や中国語など外国語の表記になっているため、自信がないという方も多いでしょう。しかし、Google翻訳などを活用すると、ある程度理解できる内容がほとんどなので、初心者でもチャレンジできます。
ただし、海外から輸入する場合、輸送費が高くなるほか、納期が遅くなることも少なくありません。また、日本製のアイテムよりもクオリティが低いものや間違いなども多いので、注意しましょう。
ドロップシッピング
ドロップシッピングとは、在庫を持つことなく、商品を販売できるシステムです。ネットショップでは、注文だけを受け付けて、発送業務はメーカーや卸売業者が行います。在庫を抱えてネットショップを開業するのはリスクが高いと感じる方にとっておすすめの方法といえるでしょう。
例えば、仕入れの資金が乏しい方や副業でネットショップを開業するので、できるだけ手間をかけたくないという方にも向いています。
出店方法を決める
ネットショップの出店方法は、大きく分けると「モール型ECサイト」と「ネットショップサービス」の2パターンです。続いては、それぞれの特徴について詳しく解説します。
モール型ECサイト
複数のネットショップによって形成されるサービスをモール型ECサイトといいます。例えば、「Amazon」や「楽天市場」などがモール型ECサイトの代表です。もともと集客力のあるサービスを活用してネットショップを開くことができるので、集客ノウハウに乏しい方でも利用しやすいでしょう。
また、テンプレートが用意されているケースが多く、Webに関する知識がなくても、比較的スムーズに開業できます。
ただし、モール型ECサイトを利用する際は、月額使用料が発生する点を把握しておかなければなりません。オプション利用料やロイヤリティなどを踏まえると、想定よりも多くの費用がかかることも考えられます。トータル的なバランスを踏まえて、利用を検討することが大切です。
ネットショップサービス
多くのショップがひしめくモール型ECサイトとは異なり、自分だけのネットショップを作りたい方に向いている方法がネットショップサービスです。
ネットショップサービスでは、運営にあたって必要なショッピングカートや決済システムなどを利用することができます。プランによっては、無料で利用できるシステムもあるので、コストを抑えたい方にもおすすめです。
ただし、モール型ECサイトのような集客力がなく、自分で工夫をして営業をしていかなければなりません。また、利用する機能や商品数によっては費用が高くなるので、事前に試算しておく必要があります。
ネットショップを構築する
商品やコンセプト、ネットショップの出店方法まで確定したら、いよいよネットショップを構築する作業です。出店方法によって作業は異なりますが、基本的には以下の流れで行います。
- デザインを決める
- 決済方法を選ぶ
- 商品を登録する
- 商品の画像や説明文を記載する
- テストを行う
まず、コンセプトや商品に合わせて、ネットショップのデザインを決めましょう。デザイン次第で、ユーザーの心を掴むといっても過言ではないため、慎重に決める必要があります。また、使いやすさや検索のしやすさなどにも留意して、ユーザー目線に立って検討することが大切です。
決済方法は、できるだけ複数の方法を利用できるように用意しておくことをおすすめします。例えば、スマホ決済サービスやキャリア決済、コンビニ支払いなどが使えると、より多くのユーザーが利用しやすくなるでしょう。反対に、現金払いやクレジットカードのみだと、顧客を逃す可能性があります。
デザインや決済方法が決まったら、商品を登録していきましょう。商品の写真は、実際の状態が明確にわかるように撮影する必要があります。販売後のトラブルにつながらないためにも、しっかりと留意しましょう。また、説明文も丁寧に書くことで、詳細が伝えやすくなり、売上アップに繋がります。
最後に、全ての準備が整ったら、テストを行うことも大切です。いざ、開業してからエラーが発生しないように、シミュレーションをしながらテストを行いましょう。
個人事業主として開業する
ネットショップを運営すると利益が発生するため、個人事業主として開業届を提出しなければなりません。開業届を出さなかったからといって罰則はありませんが、所得税法によると、「事業所得を生じる事業を開始した日から1ヶ月以内に税務署長に提出しなければならない」と定められています。
合わせて「青色申告承認申請書」を提出しておくと、確定申告で特別控除を受けられる点もポイントです。
青色申告承認申請書は、開業から2ヶ月以内に提出するように定められているので、開業届と同時に提出すると良いでしょう。
ネットショップ開業にかかる費用(最低10〜20万円)
ネットショップ開業にかかる費用は、利用するシステムや規模によって異なるものの、最低10〜20万円程度が一般的です。例えば、カートシステムをすぐに使える「ASP型」と呼ばれるネットショップサービスを使えば、初期費用や月額費用をかなり抑えられるので、初心者でも気軽に開業しやすいでしょう。ただし、デザインや機能の自由度が下がるので注意が必要です。
ネットショップ開業の注意点
ここまでご紹介したように、近年は個人でも気軽にネットショップが開業できるようになりました。しかし、開業をするにあたって、注意点を押さえておくことも大切です。無闇にネットショップを開業して、後になってトラブルに発展しないように注意しましょう。続いては、ネットショップ開業の注意点を詳しく解説します。
販売禁止ではないかを確認する
前述したように、商品によってはネットショップで販売できないものもあります。例えば、酒類や中古品を販売するためには、届け出を出さなければなりません。許可なく販売をしてしまえば、法律に触れることになり、罰則の対象となるので注意しましょう。
また、利用するサービスによって、取扱商品に関するルールが設けられているので、事前に確認する必要があります。アダルト関連の商品や偽ブランド品、医薬品などは、取り扱い不可としているサービスがほとんどです。ルールに反してしまうと、ネットショップの運営自体ができなくなるため、ルールに則った商品を取り扱うようにしましょう。
コストと利益を計算する
いくら魅力的なネットショップを開業し、ルールに則った商品を販売したとしても、コストや利益に関する計算がきちんとできていないと運営を継続することができません。
ネットショップを運営するためには、仕入れやシステムにかかる費用など、様々なコストがかかります。売上からこれらの費用を差し引いた金額が利益です。
売上が上がっても、コストが多くかかれば赤字になってしまいます。黒字運営を続けるために押さえておきたいのが利益率です。利益率とは、売上に対する利益の割合を指しており、利益率を把握するとネットショップの経営状態がわかります。
利益率が高ければ収益性が優れていますが、単純に利益率をあげればいいというものではありません。あまりにも値段を上げすぎてしまえば、同業他社に顧客を奪われてしまうでしょう。平均的な利益率は、業種や商品、分野によって異なるため、リサーチをしたうえで、妥当な売値をつけることが大切です。
セキュリティ面に留意する
ネットショップを安全に運営し、顧客に安心して利用してもらうためには、セキュリテイ対策が欠かせません。万が一、情報漏洩が発生し、顧客の個人情報が流出するような事態になれば、賠償問題に発展します。さらに、社会的信用を失うことにも繋がり、これまで培ってきた努力も崩れ去るでしょう。
ネットショップの構築方法には様々な手段がありますが、コスト面ばかりを気にしてサービスを選ぶと、セキュリティ面が甘い可能性があります。ネットショップを構築する際は、セキュリティ面に関するサポートもしっかりしているかどうかも確認するように心がけましょう。
また、ネットショップの管理は、インターネット環境が整っていれば、場所や時間を問わず可能ですが、公共のWi-fi暗号化されていないケースもあるため要注意です。暗号化されていないWi-fiは利用しないようにしましょう。
まとめ
今回は、個人でネットショップを開業する方法について詳しく解説しました。
近年は、インターネット環境が整っており、ネットショップを開業するためのサービスやツールが多数あります。コンセプトや取り扱い商品、ネットショップの規模などを踏まえながら、自分に見合った方法でネットショップを開業することが大切です。
また、開業後も安心して運営するために、利益やコストの計算、セキュリティ面なども押さえておきましょう。